周辺視目視検査法導入事例として(株)キーレックス　品質管理部　梶原雅典氏に同社の「人に優しい職場環境の実現」に向けた取組みについてご寄稿頂いた。

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作業環境と方法と照明を見直し、不良の見逃しが無く低疲労な目視検査を可能にし、 明るく元気で健康的な職場環境を構築する！！

(株)キーレックス　品質管理部　梶原雅典
（http://www.keylex.jp/）

１．(株)キーレックスと周辺視目視検査法

　当社は、広島県を中心に、国内6拠点（5工場+1子会社）、海外3拠点で事業展開を行っている自動車プレス部品メーカーとして、 スチールからアルミ材のプレス品を製造している。
　当社では、従業員の健康増進・健康管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで従業員の健康を守るとともに会社の生産性向上を目指す経営手法である「健康経営」を目指している。従業員が65歳、そして70歳になっても安心して働けるような環境を構築することを目的とした取り組みを開始した“エルゴノミクス活動”の一環から、2018年11月に大阪工業大学で開催された外観検査ワークショップ（※）で周辺視目視検査法の指導をしていただいた事がきっかけとなり、現在、検査工程の改善活動を行っている。
※感察工学研究会が主催したPVI2018外観検査ワークショップ（https://pvi.itlab.org/pvi2018/）

　当社の製造工程における目視検査とは従来“明るい照明の環境下で不良を探す”ことが前提条件の、“部位を指定して凝視し不良を探す作業”であった。検査員に問診をしたところ「二重チェックに時間が取られるなど、非常に外観不具合の発見に苦慮している」「ギラツキがあり目が疲れるため、対策として疲労低減のメガネを取り入れたが効果がなかった」「大物製品の外観検査の見方や不良の見逃しに対する不安、確実に検査ができているかに対するプレッシャーがある」という回答が複数あった。
　周辺視目視検査法は、“低照度下でモノの見方も変える”という従来の我々の検査に対する考え方からかけ離れたもので、まさに「目から鱗」、目視検査の概念を覆すモノであった。

２．目視検査改善活動の歩み

①2018年12月「無」

　従来、メッキ等の表面処理されたアルミ部品の目視検査については、明るくしてよく見えるようにという思いでLED照明 を導入し、照度を上げていた。（当初1300ルクス）
改善活動を開始するにあたり先ずは照度を落とした結果、検査員のコメントは「暗すぎて良く見えない」というものだった。

②2019年3月「はじまり」

「周辺視目視検査法」を学び、パーテーションを設置して製品に照射される環境光（外光や天井照明からの光）を遮り、有機EL照明（カネカ社製）を導入した。更に照度を下げ、目線を固定してワークを振るハンドリング、顔を動かさないワークの取り置きへと改善した。すると、検査員からは「バーン！！と不良が飛び込んで来る！！」という驚きの反応があった。これは従来の不良探しでは無く、不良が自ら存在を教えてくれている様であった。

③2019年8月「成長と広がり」

検査員が周辺視目視検査法の習得後に更なる向上が見られ、指導者へと成長した。この指導者を「匠」と名付け、パートナー企業へ広げていく取組も開始した。

３．今後の取組へ向けて

　この活動を通して、検査に使用する照明は周辺視目視検査法と輝度の均一度が高く低反射で低ブルーライトの有機EL照明の組合せであれば、100ルクス程度の低照度下でも充分不良が発見でき、疲労を最小限に抑えられる事がわかった。また、目視検査にはリズムが必要で、動作に切れ目がなく連続性を持つことが望ましく、リズムよく作業していると姿勢が良くなり作業も早くなってくることがわかった。
今後は「無限なる成長と国内外の製造拠点やグループ企業、パートナー企業への広がり」へ向け活動を進める。トレーニングセンターを使った周辺視目視検査員（匠）育成や検査領域だけでなく幅広い作業への展開を進め拡大していく事で、従業員の健康を守り、 70 歳になっても安心して働ける企業を目指していきたい 。