いまだからこそ目視検査を見直し、健康を取り戻す(前編)
~不良の見逃しを無くし、検査を高速化させ、尚且つ低疲労で検査する事ができる周辺視目視検査法が日本の製造業を守る(前編)~
目視検査は無くせない
これは(公財)ちゅうごく産業創造センター(現、中国地域創造研究センター)が2015年度に実施した「ものづくり企業の生産現場における検査の自動化促進可能性調査」(有効回答企業数241社)の結論の一つでした。しかし,多くの企業が人による検査の困難点として、検査能力の個人差が大きいこと、検査員の確保・増員が困難であること、教育・訓練が難しいことを挙げていた。しかしながら、これらは雇用側の視点である。従業員側にとっては、作業がきつい、不良品を見逃すと叱られる、充実感が乏しい、目が痛い、肩・首が凝り身体(健康)が心配と不安を抱えながら仕事をしている。それでは、どうすればよいのか。
周辺視目視検査法
この検査法は、違和感―精査のリズム化と作業環境の適正化の2つを実現するための具体的な方法から成り立っている。前者は、多くの目視検査現場で正しい見方と信じられている不良箇所を探そうと目を皿のようにして見る見方とは真逆の方法である。後者は、検査員の体格に合わせた作業机・検査品トレイの高さ・配置の適正化と、不良箇所を際立たせるライティングと照度の適正化である。いずれも多くの目視検査現場では配慮されることがなく、特に、照度に関しては、必要以上に高く、3000lxを超えている現場も珍しくはない。不良の見逃しが発生すると、照明を増やしたり、照明位置を下げたりしてもっと明るくすることが改善策であると考えがちである。周辺視目視検査法は従来の目視検査の考え方を作業環境も含めて大きく見直すものであり、見逃し率を低減するとともに検査員の無駄な疲労を低減し、健康状態の改善を図ることが可能な検査法である。
有機EL照明
昨年6月にカネカの有機EL照明が搭載されたデスクライトに出会った。室内灯を消灯すると、40㎝直下の照度は400lx程度しかなかった。検査光源スタンドとして製品化されており、明るくはないが、眼に優しいとの触れ込み。周辺視目視検査法では、明暗の感度の高い周辺視野を積極的に使用するため検査時の手元照度は極力低い方が良い。しかし、発見した異常領域の良否の確認のためには、ある程度の照度が必要との判断で、感察工学研究会では、手元照度1000lx程度を推奨してきた。このため、有機EL照明は目視検査には一瞬不向きと思えた。しかし、光沢製品に対しては有機EL照明には、次の2つの利点があることに気づいた。①面発光であるため、光沢面に写る光源像の反射を直接見ても眩しくない。②光源に製品を近づければ十分な照度が得られるため、良否の確認が容易である。
検査員の驚きの声
昨年11月にPVI2018外観検査ワークショップを大阪工業大学大宮キャンパスで開催した。参加者は82名。検査実演と指導のセッション(写真)では、予め蛍光灯(20W)と有機EL照明を取り付けたセル生産作業台で、5社の現場技術者が持ち込んだ自社の製品の検査の実演を行った。その際、照明環境を次の順番で変えた。①天井照明+蛍光灯、②蛍光灯のみ、③有機EL照明ベースライトのみ。結果は、多くの検査員が①より②の方が見易いと声をもらし、②より③の方がさらに見易いと驚きの声をあげた。①は各会社の検査環境に近いと思われる。検査に不要な外来光を除くだけで見易さが増し、さらに、有機EL照明の面発光の良さが受け入れられた瞬間であった。
次回のPVI2019外観検査ワークショップは2019年9月25日、AGCモノづくり研修センター(横浜市鶴見区)で開催する。「新たな発見、共有、そして、自発的実践が生まれるワークショップを目指しますので、ご期待ください」と石井明‐感察工学研究会主査(香川大学創造工学部教授)は述べている。
有機EL照明を体験
5月22日から3日間、パシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展2019横浜(主催/公益社団法人自動車技術会)」の㈱カネカブース(ブース番号270)で、有機EL(OLED)検査用照明が出品され、製品表面の見え方を体験する事が出来る。
●問い合わせ:oled-market@kaneka.co.jp