いまだからこそ目視検査を見直し、健康を取り戻す(後編)
~不良の見逃しを無くし、検査を高速化させ、尚且つ低疲労で検査する事ができる周辺視目視検査法が日本の製造業を守る(後編)~
不良探しの問題点
目視検査にとって重要な問題点として、不良品の見逃しが挙げられる。従来は疲れて集中力が途切れることにより見逃しが発生すると考えられていた。しかし、次のような事例の原因を考えると、疲れによる集中力の途切れでは説明できない。
【事例】
A製品にはときどき4種類の不良(打痕、汚れ、欠け、キズ)が見つかる。ある日の業務開始時に検査部署の指導者から、昨日は「汚れ」の検査漏れがあったので今日は「汚れ」を見逃さないようにしなさいという指示があった。その結果、その日は、「汚れ」の見逃しはゼロとなった。しかし、汚れ以外の不良の見逃しが発生した。
脳は必要最小限の情報で目的を達成するように機能することを、この現象を理解するために知っておく必要がある。特定の不良「汚れ」の見逃しを注意されると、「汚れ」のイメージが想起され、そのイメージと一致するものを見つけようとする。結果として、「汚れ」以外の不良には気づくことが困難になり、不良を見逃すことになる。これが、不良探しの問題点である。特定の不良を強く意識してしまうことが、結果としてそれ以外の不良の見逃しにつながる。
周辺視目視検査では、良品のイメージとは異なるものを感じ、その箇所を精査する見方である。この見方でもっとも重要なことは照度を上げ過ぎないことである。光沢性の強いメッキ部品のキズ検査では、特にこの点は重要であり、不要な環境光を遮ることができれば、手元の照度は100ルクス以下でも十分にキズを感じることができる。しかし、そのキズの精査(OK/NG判定)の際には、ある程度、照度を必要とする。
OLED(有機EL)照明は、拡散光で低照度の為、ワーク表面からの反射が抑えられて検査員の目の疲れを低減させることができる。予め照明の設置位置を上手に設計しておくことで、製品を照明に近づければ精査に十分な照度となり、光沢性の強い部品の外観検査においては使い勝手が良い照明ともなる。
PVI外観検査ワークショップ
目視検査に特化したワークショップが、2019年9月25日、AGCモノづくり研修センター(横浜市鶴見区)で開催される。今年のテーマは、「環境と身体動作が創る効率と健康」。目視検査がしやすい環境を整え、終日、安定した目視検査ができる身体動作を習得し、実践すれば、不良の見逃しを出さずに検査効率の大幅アップが図れる。同時に、検査員の健康の改善と維持が図れ、目視検査の職場が明るくなる。これが、本ワークショップのテーマであり、目標である。主なカリキュラムは以下を計画している。
(1)超入門:環境と身体動作が創る効率と健康
(2)周辺視目視検査法のための支援技術
・目視検査のための照明と照度
・視線解析による訓練支援と習熟度評価
・画像検査/AI技術の上手な使い方
(3)目視検査改善訓練体験
実演/指導 照明環境 訓練支援/習熟度評価体験
健康管理システム/疲労度評価
(4)目視検査改善事例紹介
(5)講話:インテリア健康学、目視検査健康学
(6)交流討論会
●申込み:PVI2019ホームページ
(https://pvi.itlab.org/pvi2019/)
※PVI=Peripheral Visual Inspection
「目視検査をどのよう見直すべきかを様々な体験を通して理解できるようになるものと思います。新たな発見、共有、そして、自発的実践が生まれるワークショップを目指しています。検査員、管理者、責任者、技術者、研究者の方々の参加を心よりお待ちしております」と、石井明・感察工学研究会主査(香川大学創造工学部教授)は述べている。
※感察工学研究会:2010年2月(公社)精密工学会 画像応用技術専門委員会内に設置され、周辺視目視検査法の科学的な解明とこの検査法の普及を行っている。科学的な解明の成果は「周辺視目視検査法の理解と導入のためのヒント」として、研究会のホームページに掲載している。
(http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/~ishii/kansatsu/)